こんにちは。ブラジル好き歴10年越え、ブラジルで絶賛動画サブスク中毒のぴょんぴょ子です!
今回は、人気動画配信サービス『Netflix』の動画コンテンツで、ブラジルを様々な角度から垣間見ることができる番組をご紹介します。
ブラジル大好き民が観て楽しめるのはもちろんのこと、ディープなブラジルへの探究心があってもなくても純粋にエンターテイメントとして面白い作品を中心に選出しました。
全作品、日本語字幕付きです。
作品を通じて、一緒にブラジルを覗きに行きましょう!!
※尚、今回はNetflixの作品、ないしNetflix限定配信の作品のみのご紹介です。『シティ・オブ・ゴッド』などのブラジルを舞台にした他の有名作品は、ぴょんぴょ子が紹介するまでもないので、割愛します。
ー2021年7月19日追記ー
2021年7月にNetflixにて公開されたブラジルを舞台にした作品『エリーゼ・マツナガ 殺人犯の抱える心の闇』については、別記事にて紹介しておりますのでそちらをご参照ください。
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1.The Circle 〜ブラジル編〜
ゲーム系リアリティ番組『The Circle』のブラジル編です。
対面せずにチャットだけでコンタクトを取るコミュニティ、The Circle(サークル)の中で、一番の人気者になる為に切磋琢磨する新感覚リアリティショー。8名強の参加者は、個々に割り当てられた、外界から遮断された部屋の中で生活し、チャットによって互いに情報を交わします。参加者同士が、相手のプロフィール写真やチャットの内容を元に投票によって人気者を決め、勝利の座を争います。視聴者は、彼らのチャット内容以外にも、彼らが各々の部屋で自身の考えや心情、ゲームに勝つ為の作戦などを口に出しながら過ごす様子を観ることができます。
ゲームに勝ち上がっていく心理戦の様子はもちろんのこと、彼等の間で行われるやり取りや、カメラに向かって話す際の姿や言葉に、“ブラジルらしさ”を感じられる要素が滲み出ていて面白いのです。
参加者のリアクションは笑ってしまうくらい大袈裟です。「番組の性質上の誇張でしょ」と思えそうな様子も、実際にブラジルで生活していると、「あるある!」と感じられる光景なのです。特に作品内でも印象的な、抑揚の激しい話し方で喋る様子は、ブラジルに住めば一度は目の当たりにするブラジル人の特徴の一つといっても過言ではないでしょう。
プレイヤーの出身地がブラジル全土に跨っている為、各地域特有の訛りや言葉や環境の違い、そしてブラジル人の抱く各地域の出身者に対するイメージを見聞きできるのも、面白いポイントです。例えばリオっ子(ブラジルではCarioca / カリオカと呼ばれます)に対し「まさに正真正銘のカリオカ!本当に明るい人ね!」といった表現をする参加者がいます。それは、リオっ子は一般的に「陽気で人懐っこい」イメージをブラジル人の間で持たれているからです。是非とも他の地域の出身者へのコメントに着目しながら観てみてください。
そして、この番組の構成上、ブラジル人のダークな一面も見ることができてしまいます。陽気でコミュ力が高いと思われがちなブラジル人ですが、それだけではない、SNS上では見せない彼らの裏の顔や、策略家としての一面も覗くことができるのです。普段は隠れたブラジル人のディープな面を見せてくれるのは、この番組ならではの特徴です。
他にも、現代ブラジル人の絵文字の使い方や、スラング、チャット上での略語、プロフィールなどの写真に対する考え方などを見せてくれるのも、この番組の魅力の一つですね!
※”ブラジル人らしさ“という表現を用いましたが、ぴょんぴょ子が実際に出会って感じた主観であることをお含みおきくださいませ。
この番組は、面白さに波があるので途中で中だるみを感じる場合もあるかもしれません。しかし!最後まで観た人だけが得られる感動があるのです(『The Circle』シリーズあるあるです)。というのもこのゲームの肝は、”参加者はゲーム中の間は基本的にお互いのリアルな顔を見ることができない点“にあり、参加者たちはゲームの最後になってようやく全貌を知れるのです。参加者達の中には、勝利の為に偽りの自分を装ってゲームに臨んでいるプレイヤーもいる為、このタネ明かし的瞬間に、参加達の間で笑い・驚き・裏切り・喜び・等の様々な感情が起こります。そして、同時にバーチャルの世界に閉じ込められていた仲から、リアルな友情が芽生えるのです。この様子がとても感動的なので、番組そのものをより楽しみたいなら、最後まで観続けることをおすすめします!
最後になりますが、ところどころ、「人と会えないなんて私らしくない!」、「ずっと1人で閉じこまるなんて辛い!」、「寂しい!退屈だ!」なんて言葉が出てきます。まさか彼らも撮影当初は、現実世界でも家に閉じ籠もらなければいけない日々が来るとは思っていなかったことでしょう。(ちなみにブラジル初の感染者が出たサンパウロでは、20年3月から外出自粛要請措置が取られています。)
みんなでこのコロナ禍を乗り越えましょう!#Axé
2.ビューティフル・シングス:人生にボサノヴァを
1960年前後のブラジルを舞台にしたドラマ。リオからブラジリアに遷都する時期のリオで、”心から音楽を楽しむ人たちの為の音楽ライブハウス“を立ち上げようとする女性達を題材にした物語です。
この時代は、ちょうど音楽のジャンルとしての『ボサ・ノヴァ』が台頭・確立し始めた時代にあたります。フィクションとは謳うものの、音楽家の当時の立場や心情などがリアルで、誰か特定の実在のモデルを想像してしまいそうになります(一説によると、作品内のChicoはJoão GilbertoとChico Buarqueを基に、CapitãoはWilton das NevesaやDom Um Romãoをモデルにしたキャラクターとの噂も。)。
『ビューティフル・シングス』というタイトルを聞いて「何のことやら?」となった人も、原題の『Coisa Mais Linda』を直訳したものだと聞くと、ピンと来る人も多いのではないでしょうか。そう、この原題のベースは、『イパネマの娘』の名で知られる世界的にも有名なボサ・ノヴァ『Garota de Ipanema』(Tom Jobim / Antônio Carlos Jobim作曲、Vinicius de Maraes作詞)の歌詞の一節なのです。
当時のブラジル国内(主にリオとサンパウロ)での女性、黒人、LGBTQの人権もこのドラマの大きなテーマの1つとなっており、観ているだけで胸が痛くなるようなシーンも多く映されています。一方で、辛い境遇にも勇気を持って立ち向かう彼女たちの姿がカッコ良く描かれており、現代を生きる視聴者が勇気づけられる作品としても人気を博しています。
他にも、リオとサンパウロ若しくはカリオカ(リオっ子)とパウリスタ(サンパウロっ子)の違い、政治家の汚職具合、貧富の差、アメリカへの憧れなどもわかりやすく表現されていて、今のブラジルにも多少は存在するブラジルの社会の姿や人々の考え方を垣間見ることができます(つい先日も、ブラジル南部のカルフールで黒人男性が警備員2名に撲殺される、という悲しい事件が起きてしまいました。他民族国家として成り立っているブラジルでも、差別問題はまだまだ根深そうです。)。
ちょっと堅苦しく書き過ぎましたが、まぁ観てみてくださいな。要所に挿入される有名ブラジル音楽を聴きながら、今とは異なる1960年前後のブラジルの街並みと、今も変わらないリオの自然の造形美を観ることができるので、それだけでもこのドラマを鑑賞して良かったと思えるはずです。
20年11月現在、シーズン2まで公開されていますが、続編がでるとの噂もあります。そろそろ軍政時代がやって来るのか…?!と思うと、観たいような観たくないような、複雑な気持ちです(勝手に想像して何を言う。)。
余談ですが、このドラマの中でタイ関係のものが登場します。当時のブラジルで禁止とされていた闘鶏のシーンで、タイの軍鶏が描かれているのです。タイ好きとしてはこんなひょっこり登場もちょっぴり嬉しいものです。
3.シェフのテーブル シーズン2 第2話アレックス・アタラ
各国の有名シェフに密着した食のドキュメンタリー番組。シェフになるまでの生い立ちや、食に対する考え、国民性や職の歴史、シェフのレストランの在り方、などを中心に語られます。
シーズン2の第2話は、サンパウロ出身のブラジル人有名シェフ、Alex Atala(アレックス・アタラ)氏の特集です。
彼がレストランを立ち上げるまでの生い立ちを振りかえる中で、ブラジルにおけるブラジル料理の立ち位置、ブラジルの外食文化の歴史、ブラジル各地(主に北部)の食文化を見ることができます。また、昨今は森林火災でも話題を呼んでいるアマゾン地域の様子や、アマゾンで暮らす人々の生活を、彼の食的観点から見ることができ、この点も非常に趣深い内容でした。
ちなみに彼はサンパウロの表参道とも呼ばれるR. Oscar Freire(オスカル・フレイレ通り)周辺に、ブラジル料理の高級レストランを構えており、今では世界各国からたくさんの人が訪れる有名人気店です。
D.O.M Gastronomia Brasileira
- 住所:R. Barão de Capanema, 549 – Cerqueira César, São Paulo – SP, 01411-011
- 公式HP:domrestaurante.com.br
D.O.M監修のブラジル料理レストラン、Dalva e Ditoも近く(D.O.Mから徒歩1分!)にあり、こちらはD.O.Mと比較するとリーズナブルに食べられるので、より気軽に訪れることができると思います。
Dalva e Dito
- 住所:R. Padre João Manuel, 1115 – Jardins, São Paulo – SP, 01411-001
- 公式HP:http://www.dalvaedito.com.br/
ブラジル料理の個々の紹介を見るなら、次の4.の番組をオススメします。
4.腹ぺこフィルのグルメ旅 シーズン4 題1話リオデジャネイロ
こちらも食に関するお話。
アメリカのプロデューサーであるフィリップ氏が世界中のグルメを味わい求めるフード・ドキュメンタリー番組です。各エピソード1都市を特集し、ローカルフードを中心に食べ周りながらその都市の文化や観光地を紹介する、旅番組の要素も強いポップな内容になっています。
そんな番組のリオ・デ・ジャネイロ編は、とてもバイタリティ溢れるリオとカリオカの魅力がギューッと50分に詰まっていました!
前述のシェフのテーブルよりも、庶民の料理に焦点が当てられており、ブラジル人の、特にカリオカの日常における食文化を観ることができます。(一部、ざ・ブラジル飯以外を扱うレストランも紹介されています。)また、多くの観光客が訪れる、リオの有名観光スポットも映し出されます。その為、現地を訪れたことがある人なら比較的、既知の情報が多く、若干物足りないかもしれませんが、ブラジルには行ったことがないけど興味がある人には、十分楽しめる番組です。
ブラジル人の気さくで明るい感じや、feira(フェイラ)と呼ばれるマーケットでとにかく試食を勧められる様子、現地人と観光客で溢れるビーチ、トタンの家がひしめく犯罪が絶えない貧民街favela(ファベーラ)/ comunidade(コムニダージ)/ morro(モーホ)、そして日中のフェスの超密ダンスで盛り上がるテンアゲな光景は、まさにブラジルあるあると呼べる姿です。これらの姿を知るだけでも、ブラジル初見者からすると満足できる作品です。(昨今のコロナの影響で、もしかしたらこのようなフェスやマーケットの形態も今後は変わっていく可能性も全くゼロではありません。そうなると、この映像は過去の習慣を語る実に貴重な資料となるわけですが、そうならないことを願うばかりです。)
「ブラジルに行ったらこれだけは最低でも食べるべき!」といえるブラジルの代表的な料理やデザート、お酒が網羅されているので、ブラジルを訪れる予定があるなら予め見ておくのをお勧めします!
5.ブラジル ー消えゆく民主主義ー
ブラジルの左派政党の労働者党(PT / ペーテー)出身の元大統領ルーラ氏とジウマ氏を中心としたブラジル政治を追ったドキュメンタリー映画です。PT発足のきっかけからPT政権の終わりまで、すなわち、1964年のクーデターから、超極右政権と云われる現ボウソナーロ(ボルソナロとも)大統領が当選する2018年まで、と長期にわたって描かれています。
この作品は、分かりやすさ重視のスタイルではありません。作品内で細かく説明がなされるものの、実際に起きた出来事と考察や意見が入り混じり、本編内で時間軸が前後するので、ブラジル政治に関して多少なりの前知識があった方がスムーズに話を理解できるかもしれません。
本編は、監督がPT寄りだということもあり、PT側に偏った見せ方にはなってはいます。とはいうものの、それを踏まえた上でも、現大統領が国民に選ばれた(或いは、選ばれてしまった)背景や、ルーラ及びジウマ元大統領が失墜した(いや、失墜させられた)絡繰を見て、タイトルである“ブラジルー消えゆく民主主義ー”が文字通りその通りである、と、ある種納得させられる内容になっています。
この手の話が日本語字幕付きで鑑賞できるのは、とても有難いですね。
軍事政権時代も含めたざっくりとしたブラジル政治史、ブラジル政治が与野党共にいかに汚職にまみれているか、政治デモの様子などブラジル国民の自国の政治に向き合う姿、これらを知れるだけでも、観る価値はあると思います。
この作品における“悪役”、即ち反PT勢の中において、一際目を引く人物がいます。それは作品内ではまだ判事であったセルジオ・モロ氏です。当時の彼は、対PTにおいてヒーローのごとく汚職を追及していきました。この時の手腕を買われて、19年ボウソナーロ現大統領政権発足時に法相に任命されたほど、際立った仕事ぶりだったのです。しかし作品中では、彼の勢いだけではなく、ツメが甘いところも映し出されています(ネタバレになるので詳細は省きますが、汚職の証拠が拍子抜けするほど確証に欠けるのです)。実はコロナ禍に突入した後、法相として現大統領の息子に浮上する汚職疑惑にも追及していくのですが、その際においても再びツメの甘さが露呈していたような節があったのです。結局、モロ氏は20年に法相を辞任するに至りましたが、今後もまた登場しそうな気がします。引き続き注目したいものです。
この作品は、2019年6月からNetflixを通じて世界各国で鑑賞できるようになりました。2019年サンダンス映画祭でワールドプレミアを受賞し、第92回アカデミー賞ドキュメンタリー作品部門にノミネートされており、映画界からは非常に評価された作品といえるでしょう。
近代ブラジル史やブラジル政治を勉強したい人、ブラジルに駐在する人、政治を語るのが大好きなブラジル人のお友達がいる人、是非ご覧ください。
作品とは関係ありませんが、2013〜14年と、2019年にもタイに住んで政治的節目に居合わせてしまった身としては、ブラジルの現大統領とタイの現首相って、ちょっと似たものを感じてしまいます。言論統制が怖いので詳しくは書きませんが、ほんの独り言まで。
6.殺人犯の視聴率
さて、最後にどでかい爆弾をぶっ放します。
日本だったら放映できないようなクライムシーンが映されるので、子供との鑑賞や食事をしながらの鑑賞は控えた方が良さそうなお話です。ぴょんぴょ子個人的には、今回ご紹介した6つの作品の中で最も惹きつけられた作品なので、本当は声を大にしてオススメしたいのですが、ショッキングな映像が多すぎて観る人を選ぶ作品でもあります。鑑賞は自己責任でお願いします。
今から遡ること10年以上も前の話。ブラジルの北部、アマゾン熱帯雨林で有名なアマゾナス州の、州都マナウス市に実在したニュース番組のキャスターを取り巻く、犯罪疑惑のドキュメンタリーです。
とにかくドンデン返しがえぐすぎる作品です。これ以上書くと即ネタバレになるので、内容についての紹介はここまでに留めておきます。「え、内容うすっ!」とお思いになった方も、いざ観たらこの紹介文の情報量の少なさに感謝することになるでしょう。
「ドキュメンタリー」と聞くとつい身構えてしまいがちですが、この作品は違いました。ストーリー展開が非常に巧妙で、全編(約50分 x 7エピソード)を一気見できてしまいます。非常に面白いです。実際に起きてしまった酷い話なので面白いという日本語を使うのは不適切ではありますが、なんというか、引き込まれてしまいます。
街に蔓延る犯罪、ギャング集団の残酷さ、政治家や警察の腐敗具合、マスメディアの過激化、犯罪と隣り合わせでの生活を強いられる市民の安全と平和を求める切実な思い………これらの要素が、「真実」を追い求めるこのドキュメンタリーに介在しています。
ブラジルは日本の国土の約22.5倍とだだっ広く、本作の様子はブラジルのたった1都市の過去に過ぎない、と考えることもできます。もちろんこの作品で描かれた様子が、現代ブラジルの全体の姿でないことはたしかです。しかしながら、favela(ファベーラ)、comunidade(コムニダージ)と呼ばれるブラジルのスラム・貧民街を中心に、今でも少なからず残っている姿もあるのです。ブラジルで生活する可能性がある、ブラジルのお友達と関わることがあるなら、この話を頭の片隅には入れて置いても悪くはないと思います。
ちなみにこの作品の舞台となったマナウス市は、外資系企業の工場も多く、大都心サンパウロ市程ではないものの、ブラジル国内において比較的日系人や日本人駐在員が多く住んでいる場所です。アマゾンを観光するのにも避けては通れない市でもあり、この作品を観たアナタもいつか足を運ぶ日がくるかもしれません。
冒頭でも申し上げたとおりに、見るに耐えない映像も含まれております。口を酸っぱくして言いますが、ご鑑賞の際はお気をつけください。
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実際に現地に赴いて知るのが難しい今、是非これらの作品を通じて、ブラジル感に身を包まれてみては如何でしょうか?
今後も新しい作品が登場次第、ご紹介して参ります〜!Tchauちゃお!
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